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認知症

〔JB Line内部で認知症についての勉強会用に準備した資料より〕

認知症とは:

認知症の特徴
*認知症とは何でしょう?~健忘とのちがい
  • 脳の器質的な病変
  • 認知症の原因になる病気 
アルツハイマー型認知症(変性疾患)、脳血管性認知症など

*どんなことが難しくなってくるのでしょう~認知症の症状
①記憶障害(ものを覚える力・覚えたことを忘れない力の喪失)
②見当識障害(時間・場所・人物の順)
③理解力や判断力の障害(同時処理困難・変化に混乱・観念と現実の混同)
④実行機能障害  (計画を立てる、実行することの困難)
→ 意欲・気力の減退
⑤基本的な生活動作の困難 (移動・着脱・排泄など)
⑥感情の障害
不安、妄想、幻覚、徘徊、不潔行為、暴力など
しまい忘れ→物盗られ妄想

認知症の本人、家族への支援
*どう関わったらいいのでしょう? ~認知症の正しい理解に基づく対応を
  • 自分や家族が認知症になる可能性は誰にでもある
  • 受診のすすめ
  • 信頼関係を築く
  • 心はかけるが手はかけない(残存能力の活用)
  • 暮らしやすくするための工夫 ・ 事故防止 
  • 急激な環境の変化を避ける
対応のポイント
驚かせない、せかさない、自尊心を傷つけない
見守る、はっきりとやさしい口調で、声掛けはひとり

*家族はどう感じているのでしょう?
  • 身近な人に対して強く出る症状
  • 認知症の家族との関係の喪失
  • おだやかな生活を継続するための支援 

認知症の方の家族の喪失:

■「あいまいな喪失」 

認知症の方の家族を理解するのに、「あいまいな喪失」という、1999年にミネソタ大学教授ポーリン・ボス氏によって提唱された概念があります。「親密な関係にある人が、失われたのかどうかが不明確なため、明確な喪失とは違い社会的な承認がえられにくく、喪失を経験している人々にディストレスをもたらす」と言われています。(「ディストレス」とは強い苦しみを意味します) この喪失には二つのタイプがあり、認知症は第二のタイプに当てはまるとされています。身体的には確かに存在しているけれども、まるで人が変わってしまったかのように感じる、という場合です。

Type 1 「さよなら」のない別れ(Leaving without Goodbye)  身体的には不在だが心理的には存在
         自然災害時における行方不明者、行方不明兵士、誘拐・人質・拘禁、移民、養子縁組、離婚、転勤など

Type 2 別れのない「さよなら」(Goodbye without Leaving)  身体的には存在するが心理的には不在
認知症、慢性精神病、脳挫傷、脳梗塞、アディクションなど

<引用・参考文献>
Boss P (1999). Ambiguous loss; Learning to live with unsolved grief. Harvard University Press. (南山浩二訳(2005).「さよなら」のない別れ 別れのない「さよなら」―あいまいな喪失. 学文社)
南山浩二 (2012). あいまいな喪失; 存在と不在をめぐる不確実性. 精神療法38. 455-459.


■認知症の方の家族の喪失の特徴

認知症の方の家族が経験する「あいまいな喪失」は、以下の三つの側面から、死別に代表される明確な喪失とは異なる困難があるとされています。

[認知上の不確かさ]
自分の家族が認知症になっても、その方は身体的に失われているわけではありません。また認知症の症状は初め、生活の中で「どこか違う」「何かがおかしい」というようなちょっとした違和感として感じられたり、老化の過程と見分けがつかなかったりすることから、家族はどう理解してよいかわからない状況に立たされ、問題解決に向かっていくことが難しくなります。

[役割の再編成の困難]
そのため、認知症の方本人に前と同じ姿を期待してしまったり、その方を援助する等の新しい役割への移行がうまくいかなかったりします。

[状況定義の契機の不在]
また、死別の場合の葬儀のように、永遠の喪失がおこったことを定義づけるイベントや儀式があるわけではありません。そのようなあいまいな状態が長期に続いていくことになります。

<引用・参考文献>
井口高志 (2012). 「あいまいな喪失」と生きるための実践-認知症の人と生きる家族への支援に注目して. 精神療法38. 460-465.


■家族の心理プロセス

不治の病や障害をおった時、本人や家族がたどる心理プロセスがあると言われていますが、認知症の場合も、家族の方が認知症を受け止めていく過程があると言われています。数々の報告がありますが、一般に以下のようなプロセスを、行きつ戻りつしながら進んでいくとされています。

① <衝撃・戸惑い・否定> の段階
② <混乱・怒り> の段階
③ <あきらめ・居直り> の段階
④ <理解・受容> の段階

認知症のうち最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、この症状と経過(図2参照)を踏まえて各段階について整理したものが以下の表です。なお、認知症の方本人も、少なくとも初期においては、喪失や不安、苦痛を経験し、その心理プロセスは家族と相互に作用し合うと言われていますので、ここでは本人の心理プロセスも併せて掲載します。

心理
プロセス
①衝撃・戸惑い・否定②混乱・怒り③あきらめ・居直り④理解・受容
本 人今はいつでなぜここにいるのかといった感覚が曖昧になり、慣れ親しんできた環境が心象的によそよそしく感じられる。「私」という存在感覚を支えている「基本的なつながり感」を喪失。この「つながり感」を保とうと必死に努力する。生活上の障害が顕著となり、それまで担っていた役割を喪失していく。「わからない人」と思われ、環境や家族とのつながりが薄れる「蚊帳の外体験」をする。「自分は不要だ」という感覚を蓄積した末に「何か魂胆がある」「大切な物を盗もうとしている」という確信に転じることもある。必死の対処を試みるが、次第に現実生活を営むことは困難に。無理をして「現実」にしがみつくと強い不安を生じる。BPSDと呼ばれる認知症の行動・心理症状(幻覚や妄想、攻撃的言動など)はその不安を回避し自尊心を支えようとする、又は苦痛を最小限にとどめようとする強い心理作用の結果ともいえる。自分のことをうまく表現できず、コミュニケーションも困難になっていく。
家 族健康な親・配偶者イメージを喪失。本人の記憶の中に生きる自分の大切な部分をもぎ取られ、埋め合わせようのない欠落感が生まれる。打ち消そうとする気持ちが働き、間違いを正したり叱咤激励や訓練を中心とした関わりになる。恥じる気持ちや社会的疎外への不安も生じ、病を受け止めきれない。介護のために自分の時間、空間、そして社会的役割まで制限されたり失われたりする。それまで自分が築き上げたアイデンティティの喪失につながり、自尊心も低くなりやすい。最も孤独を深める時期。本人の行動を正常に戻そうとする試行錯誤は、何も効果がないと気づき、あきらめの境地に。自分の内面や本人への対応が介護にどう影響するかが経験的にわかり、要領をつかむ。本人の疾患や内面の理解も深めていく。
「笑顔が返ってくる」「気持ちが通じている」など対人共感性に肯定的な感情を抱き、喪われかけていた本人とのつながりを取り戻す。本人が変わってしまい、元には戻らないことを受け入れ、それでも大切な人だと思えるようになる。
認知症の方と家族の心理プロセス(扇澤ら(2010)から改変引用)

(参考)


公益財団法人長寿科学振興財団 長寿健康ネットより(http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000003600/hpg000003582.htm
*MMSE〔Mini Mental State Examination)
認知機能を測定する検査の一つで、記憶力・計算力・言語力・見当職(日時や場所を正しく認識しているか)などを問う30点満点のテストです。
*MCI (Mild Cognitive Impairment, 軽度認知障害)
 軽いもの忘れなどはあるものの、日常生活は保たれているような状態を指します。


<引用・参考文献>
扇澤史子・黒川由紀子(2010). 家族介護者の認知症を受け止める心理プロセスと介護負担感、介護肯定感との関連性についての文献的考察. 上智大学心理学年報34, 73-87.