遺言・相続
遺言・相続
1.日本の法律と、アメリカの法律のどちらが適用されるか。
日本国籍を有する方がアメリカに居住している場合に、遺言や相続の問題が発生したら、日本の法律に基づき手続きをしないといけないのでしょうか、それともアメリカの居住している州の法律に基づき手続きを行うのでしょうか。どちらの手続きをとるかによって、調べないといけないことや、相談する弁護士が変わってきますので、まずどちらの手続きが適用されるかを考える必要があります。
まず、被相続人(遺言や財産を残す人)が日本国籍者の場合、その遺言・相続には日本の法律が適用されます(法の適用に関する通則法36条)。相続人(財産を譲り受ける人)の国籍や居住地は関係ありません。
一方、マサチューセッツ州をはじめとしたアメリカ各州では、被相続人がその州に居住していた場合、または不動産等の財産を残していた場合に、その州の裁判所でProbateの手続きをとることとされています。こちらも、相続人の国籍や居住地は関係ありません。
よって、日本国籍を有する方でアメリカに居住する、もしくはアメリカに財産を持っている方は、日本とアメリカの居住州・財産保有州の法律がどちらも適用されうる、ということになります。
もっとも、実務上、相続の執行の簡便さから、①日本に居住・財産がある場合は日本の法律にしたがって、②アメリカに居住・財産がある場合は、その居住している州・財産がある州の法律にしたがって、遺言・相続の手続きを行うことが多いです。そのため、自分の居住している場所、または財産がある場所に基いて、どちらの国の手続きを行うべきか、弁護士等に相談するとよいでしょう。
例.
日本の法律が適用される場合
①日本に住んでいて、日本に財産を持つ親の相続問題が発生した場合。この場合、相続人である自分がアメリカに日本国外(アメリカ等)に住んでいることは関係ありません。
②自分がマサチューセッツ州に住んでいるが、自ら保有する不動産が日本にある場合。
マサチューセッツ州の法律が適用される場合
①自分がマサチューセッツ州に住んでおり、財産も全て同州にある場合。
2.日本における遺言・相続の概要
日本では、まず被相続人の遺言があればその指定に従って、遺言がなければ法律に定められた相続分(法定相続分といいます)に従って相続手続きがなされます。もっとも、相続人の間で遺産分割協議が整えば、遺言や法定相続の定めと異なる遺産の分割内容でも問題はありません。
法定相続分は以下の通りです。
①配偶者と子がいる場合 配偶者1/2:子1/2(民法900条1号)
②配偶者と直系尊属(親) 配偶者2/3:直系尊属(親)1/3(同条2号)
③配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4:1/4(同条3号)
また、相続開始以前に、子や兄弟姉妹が亡くなっていた場合は、その者の直系卑属(子や孫。兄弟姉妹に関してはその子に限る)が、その者の相続分を相続することができます。
上記の法定相続分とは異なる内容で遺産を分割してほしい場合、または特定の財産を特定の人に相続してほしい場合などは、遺言を書くと良いでしょう。日本では、決まった方式で遺言を作成する必要がありますので、弁護士等に相談してみましょう。
また、日本では、相続人は被相続人に属した権利義務一切を相続します。そのため、被相続人に借金(債務)がある場合、その借金を返済する義務まで相続することとなります。これを回避するために、相続があったことを知った時から3か月以内であれば、相続の限定承認・放棄という制度を使うことができます。
それぞれの手続きの詳細・方法については、弁護士等に相談してください。期間が3か月と短いため、注意しましょう。
①限定承認…相続によって得た財産の限度で債務及び遺贈を弁済することを留保して相続を承認すること(民法922条)
②放棄…全面的に遺産の承継を拒否すること(同法938条)
相続・遺言について、詳しいことは、日本の弁護士・司法書士・行政書士に相談してみましょう。
3.マサチューセッツ州における遺言・相続の概要
マサチューセッツ州では、被相続人が亡くなると、裁判所にProbateの申し立てをする必要があります。Probateの手続きの中で、Personal Representativeが裁判所により選任され、Personal Representativeが被相続人の遺言があればその指定に従って、遺言がなければ法律に定められた相続分(法定相続分といいます)に従って相続手続きを行います。
マサチューセッツ州の法定相続分は、配偶者1/2、子1/2です。
上記の法定相続分とは異なる内容で遺産を分割してほしい場合、または特定の財産を特定の人に相続してほしい場合などは、遺言を書くと良いでしょう。マサチューセッツ州では、遺言を作成する場合、witness 2名の前でNotarizeする方式が一般的です(もっとも、最終的には裁判所が遺言が正式なものであるか判断します)。遺言の内容については、弁護士に相談するとよいでしょう。