英語教育

米国では1964年の公民権法に基づき、公立の幼稚園年長から高等教育までの13年間の教育システム(K-12)における英語学習者(EL)の児童生徒は公平な教育の機会を得る権利があるとしています。公平な教育機会を効果的に提供するために英語学習の必要性の確認、英語学習プログラムへの配置、テスト、評価、学習効果の確認等が行われています。


英語学習の必要性の確認

MA州の公立学校に入学(転入)する際、入学登録の書類の中に母語調査票(Home Language Survey)があります。そこに英語以外の言語を記入すると、英語学習の必要性があるかを判断するために、児童生徒はWIDA Screener(幼稚園年長児はWIDA Modelsを使用している学区もあり)というテストを受けます。これは英語習熟度をはかるアセスメントテストで、スピーキング(話す)、リスニング(聞く)、リーディング(読む)、ライティング(書く)の4つのテストから成り立っています。(幼稚園年長児が前期に入園する場合はまだ読み書きを習っていないのでリスニングとスピーキングテストのみ受け、後期入園者は4つのテストを受けます)。このテストでいずれか1つでも英語学習が必要であると認められると、英語学習者(EL:English Learner)と認定され、英語学習者プログラム(ELE/ESL/ELL プログラム)が適用され、ELEの授業を受けることが可能になります。ELEプログラムは普通教育の一環です。当該児童生徒にELLの授業を受けさせたくない保護者は、これを拒否する権利を有し、その場合は書面で学校に毎年通知する必要があります。ただしELLの授業を拒否しても英語学習者の認定が抹消されるわけではなく、英語の習熟度が一定レベルに到達したと見なされるまでACCESS標準テストやモニタリング(経過観察)が実施されます。


MA州の公立学校のESL/ELLの生徒が受けるテスト

前述のWIDA Screenerは入学時のみの初期アセスメントテストです。英語学習者と認定され、英語学習プログラムが適用された児童生徒は、学習効果と英語習熟度を確認するために、年に一度(1月〜2月)、WIDA (World-Class Instructional Design and Assessment) によるアクセステスト(ACCESS for ELLs)を受けます。 アクセステストは、スピーキング(話す)、リスニング(聞く)、リーディング(読む)、ライティング(書く)の4つのテストで成り立ちます。幼稚園年長児以外はオンラインテストが基本です。テスト結果は通常5月末に届きます。習熟度(proficiency level)は「1=入門レベル」「2=初歩レベル」「3=発展レベル」「4=進歩レベル」「5=到達前レベル」「6=到達レベル」の6段階です。その結果と学校での各種アセスメントの成績や学習習得状況などから英語習熟度が一定のレベルに到達したと見なされれば、ELLプログラムから卒業することができます。英語習熟度がまだ一定のレベルに到達していないと見なされれば、次の年もELLプログラムの授業を受けることができます。ELLプログラムから卒業してもモニタリング(経過観察)は続き、まだ英語学習が必要だと判断された場合は、ELLプログラムに戻ることができます。


MCAS (Masssachusetts Comprehensive Assessment System)の特別配慮および免除
MCASは、3-10年生の全児童生徒が対象の共通標準テストで、通常冬から春にかけて英語(English Language Arts)、算数/数学(Mathmatics)、学年によっては科学/技術/工学(Science and Technology/Engineering)などがあります。ELLの生徒でMCASが免除になるのは、米国在住期間が1年未満ですが、英語テストのみ免除でその他のテストは受けなければなりません。(在米期間が1年未満でも英語テストを受けることはできますが、その点数は学校・学区全体のスコアには影響しません。)ELLの児童生徒および過去に英語学習者と認定されたことのある児童生徒はテストの際に州が指定する英和・和英辞書の使用が認められ学校から支給されます。辞書を使用したい場合は事前に学校の ELE/ESL/ELLに問合せましょう。辞書の他にも以下の特別配慮がありますが(2023年時点)すべてを受けられる訳ではありません。お子さんがどの特別配慮を受けることができるのかは、各学校のELE/ESL/ELL教員にお問い合わせください。特別配慮の内容は変更されることもありますので、詳細はMA州教育委員会のMCAS Accessibility and Accommodationsのウェブページを確認してください。

MCAS公式サイト English learners が2023年のMCASテストで使用できる辞書のリスト 

https://www.doe.mass.edu/mcas/accessibility/ell-bilingual.pdf

MCASテストで使用できる語彙録のリスト

https://steinhardt.nyu.edu/metrocenter/language-rbern/resources/bilingual-glossaries-and-cognates
DESE(教育局)MCAS公式サイト

https://www.doe.mass.edu/mcas/default.html

英語学習プログラムの種類

各学区によって提供されている英語学習プログラムは異なります。以下に例を挙げます。MA州の多くの学校はSEIプログラムを採用しています。お子さんの学校がどのプログラムを採用しているかについては、各学校にお問い合わせください。


LOOK法令(LOOK Act)

2017年にLOOK (Language Opportunities for Our Kids) Actという英語学習児童・生徒のための法令が決議され施行されました。以下が主な要点です。

LOOK Act: https://www.doe.mass.edu/ele/look-act.html

State Seal of Biliteracy: https://www.doe.mass.edu/scholarships/biliteracy/


英語学習者保護者諮問委員会 ELPAC (English Learner Parent Advisory Council)

児童生徒が英語学習者(EL)と認定されると、その保護者は英語学習者保護者諮問委員会(ELPAC)に参加することができます。ELPACは保護者による諮問委員会で保護者の声を反映させることが最大の目的です。まずは保護者同士で気兼ねなく話し合い、問題や改善点などを建設的に学区や学校と話し合うことができます。ELPACの定例ミーティングやイベントなどがあれば積極的に参加することをおすすめします。

英語教育で使われる略語
DOE(Department of Education)MA州教育省。
DESE(Massachusetts Department of Elementary and Secondary Education)MA州初等中等高等教育局。
EL(English Learner) 英語学習者
ELL (English Language Learner)  英語学習児童/生徒
ESL(English as a Second Language)  第二言語としての英語
ELE  (English Learner Education)  英語学習児童/生徒教育
FEP (Fluent English Proficient)   十分な/基準に達する英語力を備えている

K-12 Kはキンダーガーテン(幼稚園年長)13年間の初等、中等、高等基礎教育の総称。

MME (Multilingual and Multicultural Education) 多言語・多文化教育
TBE (Traditional Bilingual Program)  過渡期二カ国語教育プログラム


2023年4月現在