個人・家族の備え
身体機能、認知状態、医療疾患、精神状態に問題がなく、自立生活ができているうちに、老後生活に備え日頃から準備・計画をしておく。
健康診断、健康保険、健康保持
定期的に診断を受け健康状態を把握する。目、歯の定期健診も入れる。機能低下を防ぐため、普段から体を動かす。
65歳になる前にMedicare (メディケア:公的健康保険)の申請準備を進めておく。Medicareの健康診断は、加入して12か月以内に受ける無料のリスク・スクリーニング “Initial Preventive Physical Exam”(加入後1回のみ)と、その後定期的に受ける無料のAnnual Wellness Visitとがある。
Annual Wellness Visitでは、医師は心音を聞いたり血圧を測るといった触診をすることはできない。通常のPhysical check として予約すると、医師の診察扱いとなり診察代が請求されるので、Annual Wellness VisitとPhysical checkの違いを知ったうえで予約をとること。
※ Medicare加入方法はこちらから。
65歳以後も会社勤めをしている場合、会社から健康保険を支給されていても、65歳の時点でパートAに入っておくとよい。パートAは無料であり、会社の健康保険でネットワーク外であってもMedicareを取り扱う医療施設なら支払われるので安心。
仕事を退職する場合は、勤め先の保険が切れる翌月からMedicareに移行できるように退職時、または保険が切れる2か月前にはMedicareへの加入の手続きをすること。退職して会社の保険が無くなる翌月のはじめからMedicareを有効にする。
可能であれば、勤め先の提供している保険がMedicareRXに対応しているか(Creditしているか)かどうかを会社の保険担当者に確認しておく。対応していれば、MedicareのPlan Dへの加入遅延に対する罰金が発生しない。(※手続きや確認が遅いと、ペナルティが一生かかるので要注意)。
Primary Care Physician (PCP: 主治医) を決めておく
新規患者の受け入れが難しい場合があるので、PCPが決まっていない場合は早めに決める。
老人医療専門医 (Geriatric) へ変更も選択肢として考えられる。
コラム
Concierge medicine (コンシアージェ・メディスン)
会員制の医療システム。日本語では医療コンシェルジェと呼ばれている。
PCPが担当する患者数を限定するため、担当患者に高いレベルのサービスを提供することが可能。一般的には24時間年中無休で、電話やEメールなどで対応される。専門医との手続き、面接も早い。特に各科にわたってコーディネートが必要な場合は便利。
Concierge medicineを提供する病院やクリニックとの契約の場合、会費の納入が発生するが、支払いは自己負担となり健康保険は適用されない。
医療行為にかかる費用は、各種健康保険を適用するところと、各自が後から健康保険に申請するところなど、運営方法は様々。2021年4月現在、MGH (マサチューセッツ総合病院) の場合、年会費は7,500ドル。
病院の患者専用ポータルを代理人/家族が閲覧するには
本人に代わって家族などが病院のポータルへのアクセス、閲覧をする必要性がある場合、
2つの書類を用意する。
① Health Care Proxy:
MA 州は、Agent(医療代理人)を指名して、2名のWitness(証人)と自分も含む全員の署名をフォームに入れる。
オリジナルは自分で保管。コピーは医療代理人とかかりつけの病院やPCP、遺言などの弁護士(いれば)に渡す。
(※ Agentは18歳以上で、病院や各高齢者施設等の関係者ではない者)
②かかりつけ病院のProxy form:
病院のサイト内からproxyフォームをダウンロードし、閲覧者を指名して必要情報を記入の上、MA州のHealth Care Proxy とともに病院へ提出。これによって、患者本人以外で指定された人物が病院のポータルサイトにアクセスしたり、記録を閲覧することが可能になる。
交通手段の確保
高齢者は車を運転しなくなったり、運転ができなくなっていく。交通手段がない場合、買い物や病院通いが不便となる。また、子供や親族が近くにいない場合、孤独になりやすい。
運転ができなくなった時を想定し、自家用車以外の交通手段をあらかじめ調べておく。地域のシニアセンターやCouncil on Aging では、高齢者用の交通手段や交通サービスの紹介、手配のサポートをしている。
Ride(ライド)の情報:
MetroWest Regional Transit Authority
https://www.mwrta.com/senior-and-disabled
家族で話し合う
介助なしでの生活が厳しくなった時、家族との同居が可能かどうか、訪問介護が可能か、資金的な余裕はあるかどうか、またはシニアホームへの入居が可能かどうかなど、状況に応じた話し合いをしておく。(シニア施設資料)(シニアチャート)を参照
老後生活のための自宅改装
転倒防止のため、家の中を見直す
ラグやカーペットは滑りやすく、つまづいたり捲り上げて転倒の原因になるので取り除く
Thresh hold (敷居や部屋の入口の段差) 用にカバーをつける
電気コード/電話線を通路に置かない
足全体を包む部屋履きを使う(スリッパは使わない)
キャスター付きの椅子(デスクチェア)やテーブルを使わない
照明を明るくする。夜間は、廊下や足元に常夜灯を設置。ワイヤレスのモーションセンサーやタッチ/クラップオンの照明が効果的。
夜にトイレに行く時に通るところ、普段よく通るところにはものを置かない
バスタブやシャワーの床に滑り止めを貼る。トイレやバスタブに手すりをつける
キッチンやクローゼットの整理をして、普段使いのものは腰から肩までの高さに収める
補高便座(Raised toilet seat /commode)などの介護器具を追加するなどしてトイレの高さを調整する
階段の両側に手すりをつける(身体のどちら側を怪我しても対応できるように両側に手すりをつける)
階段の端には、踏み違えたり滑ったりしないように目立つ色の滑り止めテープを貼る
廊下、通路、階段などには、つまずきの原因となるようなものがないようにする(積み上げられたものや、飛び出した家具など)
頻繁に使うものは、踏み台がなくても簡単に手が届く場所に移動する
コラム
怪我や病気によって病院で治療を受けた後、病状や症状が安定しても、運動機能が落ちて帰宅できない場合があります。そのような時は、Skilled Nursing Home (SNF)で短期滞在のリハビリを受けて運動機能の回復を目指します。
帰宅が困難になる原因の多くは、リハビリ後も低下した運動機能が戻らず、階段の昇降ができなくなることです。玄関の前の数段の屋外階段や、1階から2階につながる屋内階段の上り下りができず、自宅でのそれまでの生活が出来なくなるのです。
帰宅を可能にする解決策には、玄関前の階段にスロープをつける、屋内の階段にチェアリフトを設置する、2階に上がらずとも1階だけで生活ができるように設定する、などがあります。
こうした解決策は、SNFでのリハビリ期間中に間に合わせたり、対応できないことがあります。健康なうちに、階段昇降が困難になった時のことを想定して家の改築や改造、階段のない集合住宅や施設への転居などを考慮し、準備しておくと安心でしょう。
火災リスク低減
各部屋の外と各階に火災探知機を設置(一酸化炭素検知器も)。
コンロに自動停止装置を導入し、バーナーやオーブンが長時間作動しないようにする
電気コードが擦り切れていたり、コンセントの数が多すぎたりしないか確認
暖房器具や暖炉の点検は、専門家に依頼する
小型の消火器を台所や正面玄関の近くに置く
ヒーターと衣服、カーテン、人などとの間には、少なくとも3フィートの距離をとる
薬の安全保管と使用
薬は説明書の入ったオリジナルのパッケージで保管する
現在服用している薬のリストは、医師の診察を受けるときや、自分自身と介護者のため、手元に保管しておく
薬を適切に服用できなくなったら、pill organizerを使用するか、誰かに手伝いをお願いする
子供や認知症の人が簡単には手の届かない場所に薬を置く、置きっぱなしにはせず、必要であれば、薬箱に安全ラッチをつける
転倒や手術のリハビリ後、退院(discharge)の際に医師やフィジカルセラピスト(PT:理学療法士)、オキュペーショナル・セラピスト(OP:作業療法士)から設置や使用を推奨する医療器具や用具などのリストをもらう。これを参考に、以下の公的プログラムや医療器機・介護用品サプライ会社などで購入する。Home Care Agency(ホーム介護ケア)を入れた場合、そのスタッフが医療機器・介護用品サプライ会社での購入を手助けすることもある。
改装を支援するNPOや団体のリソース:Home Modification / Assessment & Resources
自分で改装のプランニングをする場合、以下のような医療器機や介護用品サプライ会社もある:
https://www.belmontmedical.com
https://cambridgemedsupply.com
※Medicareが適用できるお店とすべて実費になるお店があるので、事前に問い合わせを。
※シニアセンターにて介護器具の貸し出しもしている。
歩行に問題が生じ始めた時
歩きづらくなったり、転倒やつまずきが増えてきたら、Primary Care Physician (PCP:主治医)に相談をして原因を調べてもらう。大きな疾病が隠れていたり、加齢による筋力や反射神経の低下が原因になっていることもある。
後者の場合は、PCPから紹介されたPhysical Therapist(PT:理学療法士)のセラピーを受けることで、機能を取り戻す可能性がある。機能が戻らない場合は、杖(cane)や歩行器(walker)の正しい使い方の指導を受けることで、歩きやすくなったり、転倒やケガを防げる。
自己判断で杖や歩行器を使い始めると、間違った使い方により逆に転倒の危険性が高まるので、必ずまずPCPに相談すること。